山本由伸とダルビッシュを比較する

2023年オフシーズンの最大の目玉は、史上初3年連続投手4冠を成し遂げた山本由伸が、どのメジャー球団とどんな契約をするかということではないでしょうか。

かつて日本球界で無双を誇り海を渡った侍は数多くいるものの、高卒プロ入り後、若くして投手として最高のメジャー契約を果したといえば、やはりダルビッシュ有投手。そんなダルビッシュ投手と山本由伸投手の成績を比較してみましょう。

*黄色はリーグ最高

1年目(2005,2017)
ダルビッシュ投手は甲子園のスターとしてドラフト1位で日本ハムに入団、1年目からほぼ一線級の先発投手として扱われ、5勝を上げます(例の問題はあったものの、、)。一方山本由伸投手は甲子園出場はなし、ドラフト4位でオリックスに入団し、1年目は先発5登板のみでした。1年目から1軍登板するというのは高卒選手としてはズバ抜けた能力が必要ですが、1年目の実力としては完全にダルビッシュ投手が実績を残しています。

2年目(2006,2018)
ダルビッシュ投手はフル回転が始まります。登板数は25、投球回は149に達します(1試合平均約6イニング)。12勝を挙げていますので、早速「松坂の再来」と言われた怪物の実力を発揮し始めます。一方山本投手はチーム事情もあり中継ぎとして中盤を支え、54登板で32ホールド、10代でのシーズン30ホールドは史上初という記録を打ち立てました。大ブレイク夜明け前といったところでしょうか。

3年目(2007,2019)
ダルビッシュ投手は相変わらずチームの主戦として活躍を続け15勝で沢村賞獲得、山本投手は20先発し投球回は143、防御率1.95、WHIPは0.96という驚異の数字を挙げ最優秀防御率のタイトルも獲得しますが、8勝に留まります。同年2019年に15勝を上げた日本ハム有原航平投手の援護率は4.47、オリックス山岡泰輔投手は13勝で援護率3.71、一方の山本投手は援護率2.36と極端に打線の援護に恵まれず、また「野手も反省する所があると思う」という発言に代表される度重なるエラーにも悩まされ、「山本由伸はオリックス野手陣が育てた」と言われる所以となった年でした。

4年目(2008、2020)
ダルビッシュ投手は2年連続の開幕投手を務め、3年連続の2桁勝利16勝を達成、オフには結婚式を挙げ、公私ともに球界を代表する投手に君臨しました。
山本投手はCOVID19の影響で球界が短縮シーズンとなってしまうも最多奪三振タイトルを獲得し、徐々にその実力が数字に表れ始める年となりました。

5年目以降(2009-2011,2021ー2023)
両者とも完全にブレイク、貫禄も出始めます。チームも常勝軍団となり、まさに優勝請負人、球界のエースとしての座を確固たるものにしています。

ダルビッシュ投手は甲子園のスターとしてドラフト1位入団をした分、1年目からフル稼働といったところです。完投完封を求められる風潮も少なからず残っていた為、投球回数もかなり嵩んでいます。同時代には松坂大輔、岩隈久志、和田毅、涌井秀章、成瀬善久、田中将大、斉藤和巳、金子千尋といった本格派完投型投手が揃い踏み、それも投球数を増やす要因になっています。ダルビッシュ投手は2015年にトミージョン手術を経験しました。

山本投手は小柄な体格もあり、少しずつ周囲に実力を認めさせていった印象です。とはいえ山本投手をよく見ていたスカウトの山口和男さんに言わせると、高校時に既にプロ1軍半の実力があったとのこと。甲子園に出ていないこともあり、指名を取ることも若干苦労があったようです。

時代的には分業制が確立し、投球回数はダルビッシュ投手ほどには積みあがっていませんが、同世代の投手の中では圧倒的な投球回を誇っています。ブレイク後はタイトルを独占していますが、同世代のライバル投手で挙げられるとしたら千賀滉大投手ぐらいなもので、まさにぶっちぎりの成績をおさめています。

山本投手のトレーニング法は独特で、体を自由に操作することに特化した由伸体操ともいわれるマット運動、槍投げからヒントを得たジャベリックスローなど、一時はアーム投げと揶揄されたその投球フォームにも注目されましたが、すべて結果で黙らせてきました。自分のスタイルを貫き圧倒的な結果を残すという点ではオリックスひいては球界のレジェンドであるイチロー選手と共通する部分もあるかもしれません。

山本由伸投手は2024年満を持してMLBに乗り込むわけですが、どの球団でどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみでなりません。